赤ひげ診療譚
掲示板などで医療系の話になると、ひとしきり医者を批難した後で、「赤ひげを呼べ」とかって発言が出てきます。そして、その直後に決まって「お前、赤ひげを読んだ事ないだろ」ってレスが付きます。
赤ひげを持ち出した人は、おそらく、「貧しい人を無料で治療した『医は仁術』を象徴する人」とでも、漠然とイメージを持ってるんでしょう。だから、診療報酬を上げろというと「医者がお金の話しはするな」といい、医療が崩壊しかけているというと「ならば、自らを犠牲にして崩壊を防げ」という。非常に都合の良い『赤ひげ像』を振りかざして、医者に奉仕を強要します。
しかしですね、医者だって人間なわけで、お足がなければ薬を処方する事も、自分の生活さえままならない。いくら小説の中の人だとはいえ、無限に小判が出てくる打ち出の小槌を持ってると考えるのは、あまりにリアリティーが無い。
それで、原作の赤ひげはどうかというと、そういう献身的な医者像とは全く違う、むしろ破天荒な人物らしい。役人を脅したり、金持ちから高額な治療費をぼったくったり、ヤクザを叩きのめしたりするらしい。そして、「赤ひげって言えば畏敬すると思ったら大間違いだよ」と諭されると、医者を避難してた人はすっかり黙り込んでしまいます。そりゃあ、自分の無知に気付けば、恥ずかしくて仕方ないでしょう。
かくいう私も、まだ「赤ひげ診療譚」を読んだ事がなかったのです。そんなやり取りを見た後ですから、読まないとな・・・と思って、ふと父の本棚を見たら、あるじゃありませんか。そのものが。Amazonで買おうかと思ってたけど、買わずに済みました。
で、今日はずーっと読んでいたのですが・・・普通に面白い。痛快な話もあり、辛い結末の話もあり。舞台が江戸?と古過ぎるのと、登場する小道具などがイメージできない所がありますが。話の本質は、今でも通用します。誰かが例えていましたが、ブラックジャックに通じる物があります。
難しい医学用語は出てきません。むしろ、人情噺です。山本周五郎という名前だけで難しい文芸作品だと思って今まで敬遠していたのが、本当にもったいない事をしました。
読了しました。ネタバレになる内容は書きたくないので、ぼやかしながらですが。
赤ひげの養生所は、金持ちからふんだくってはいるものの、裕福では無いらしい。むしろ、貧乏。結局の所、自らの貧乏を押して、貧困層に無料で医療を提供してるのは事実なんだが。それは「医は仁術」という信念からでは無く、貧困に対する政府の無策への非常に強い怒りが原動力と読んでいて思った。というか。貧困に対する政府の無策って、今も全く同じじゃない?
一介の医者が叫んだって、政治は変わらない。そのもどかしさを赤ひげも、そして今の医者も感じている。むしろ、「規制改革会議」なんて尤もらしい名前を作って、一部の人に都合の良いルールで、やりたい放題、政治を動かされている。
しかし、ちょっと待って欲しい。今は江戸時代では無い。『主権在民』ーーーなんとかできる力を、それぞれが持ってるじゃない。
しかも今は、マスコミによる『大本営発表』以外の情報も、インターネットで豊富に得られる。もちろん、それらが本当かどうか、各人で判断しなければならないが。医療崩壊は何故始まったのか? その引き金を引いたのは誰か? くらいは調べて欲しい。
・・・などと、医療機関のブログらしからぬ事を書いてしまった。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 地デジがぁ、地デジがぁ……(2009.11.05)
- 季節性インフルエンザの予防接種は終了しました(2009.10.28)
- インフルエンザの正しい受診方法(2009.10.14)
- インフルエンザの問い合わせばかり(2009.10.07)
- インフルエンザが600人!(2009.09.26)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 赤ひげ診療譚(2008.03.01)


コメント
こんにちは
「赤ひげ診療譚」で検索してこちらにきました。
すばらしい小説ですね。
わたしも大好きで自分のブログに昔のNHKドラマを紹介しました。
37.赤ひげ・・・倉本聰さんの問いかけ
http://ameblo.jp/cm116832321/entry-10021405371.html
投稿: かたくり | 2008年3月 3日 (月) 16時14分
うちの本には、かなり昔のNHKドラマの写真が載ってました。過去に映画化もされてるんですね。つい最近も、江口主演でドラマ化されてたのを、家族に言われて知りました。・・・そのいずれも、見た事がありませんでした(汗)。でも、見てなかったからこそ小説(原作)を純粋に楽しめたように思います。
すばらしい小説だと思います。だから、テレビなどで安易に名前を引用に使うのは失礼だと感じました。
投稿: 院長 | 2008年3月 4日 (火) 01時51分